棟部「乾式工法」メンテナンス工事の流れ

2024年3月2日

連日「棟部の乾式工法」について、紹介しているので、作業の流れについて紹介したいと思います。

「棟部」は、他の部位に比べて風圧力が大きく、損壊が起きやすい部位となっています。

外力により「棟が傾く」という事は良くあります

着工前の様子です。「棟部」は地形で例えると「山脈」に該当し、赤いラインが「分水嶺」です。

左右に雨水が流れる仕組みが分かります。

「棟土」が、雨水に触れると「毛細管現象」で内部に浸透していきます。濡れているのが分かります。

棟土による「毛細管現象」については2022年8月24日付ブログ「棟土と白華現象」で、紹介しています。

「棟部」の直下の瓦を「半端瓦」と呼んでいます

屋根下地まで、濡れていましたが、下葺き材があるので、内部まで侵入するとは限りません。

瓦の重なり部分(赤色ラインより上)でも、棟土等があると、雨水を吸い上げるので、しっかりと清掃します。

風圧力が大きので、緊結に注意します

棟の周囲の瓦は、解体時にしっかりと点検します。

瓦が緊結が不十分な場合があります。

青い矢印部分では、瓦が緊結されていますが、赤い矢印部分では、瓦は「置いてあるだけ」です。今回の作業で、棟部の周囲はしっかりと緊結します。

この案件では、下葺き材の劣化以外大きな問題はありませんでした。

「毛細管現象」を防ぐために丁寧に清掃します。

既存の下地に問題がある場合は、この後、適切な補修を行います。点検時に、状態を確認し、適切な作業計画と予算を設定します。

「ワイヤーブラシ」を使用します

「棟部」直下の「半端瓦」は、後工程の「シール」との親和性を高めるためにしっかりと磨き込みます!

瓦はコスト的に交換する場合もあります。(コーキングや棟土が取れない場合等)

「半端瓦」は、2023年10月14日付ブログ「半端瓦と和瓦クリップ」でも紹介しています。

投棄の際に大きな音が出ます!周囲への配慮に努めています

「瓦」と「棟土」は、分別が必要です。建物の形状や立地条件が、予算や作業の進捗に大きく影響します。

棟部の土台となる作業が重要です!

施工順に…

①「下葺き材(緑)」を施工して、雨水の侵入に備えます(下地に問題があれば補修作業)

②周囲の瓦を締め直し「和瓦クリップ(赤)」と呼んでいる「半端瓦(紫)」を固定する金具を取り付けます

③「冠瓦」を緊結する「芯木」を固定する金具を「たるき(下地の角材)」に合わせて取り付けます

④「半端瓦」の勾配や高さを調整するため「まくら(青)」と呼んでいる桟木を取り付けます

⑤「和瓦クリップ」に「半端瓦」を差し込み緊結します。開口が広すぎる場合は、交換します。(瓦代金別途)

①の工事では、既存の下地の状態が重要です。点検時に確認をして、プランに反映させます。

「勝手瓦」の勾配の調整には「棟土」を使用します。開口が空きすぎている等の場合は交換します。

斜め方向の棟「隅棟」の場合は、三角形の瓦を「勝手瓦」と呼んでいます。

「半端瓦」「勝手瓦」の「適切な勾配と高さの調整」「棟部周囲の瓦の締め直し」を丁寧に施工します。

「勝手瓦」は2023年9月27日付ブログ「勝手瓦」でも紹介しています。

「金具」は屋根を支える「垂木」に緊結します

「金具(黄色)」に「芯木(赤)」を取り付けます。「芯木」には、冠瓦を緊結するので、腐食に強い「人工樹脂製」の商品を採用しています。

オレンジの部分は「芯木」のジョイント部分で、強度が不足するので必ず「金具」で支えます。「芯木」については、実績⑲「強力棟の芯木の交換工事」でも触れています。

弊社HP下部の「馬場商店」のバナーをタップすると商品情報が紹介されています

「ハイロール」と言う商品名の「シール」を施工して防水を確保します。

今回の震災で「半端瓦」の欠落が目立ちました。土台から完成まで妥協しません!

しっかり乾燥させることも重要です!

「半端瓦」の磨き込みは「シール」の密着のためです!「防水」「緊結」共に効果を発揮します!

「紐」がついているので「紐丸」と呼び「紐」が無い仕様を「素丸・すまる」と呼んでいます

「瓦ビス(赤)」で、しっかり緊結します。「棟土」を使用しないので、毛細管現象の心配がなく「屋根の軽量化」「耐震化」にも効果的です。

この「冠瓦」の形状を「丸冠瓦・まるかんむりかわら」と呼んでいます。「冠瓦」では、緑色の矢印で示した部分に、雨水が横方向へ流れるのを防ぐ「水切り溝」黄色部分に「紐」と呼んでいる突起があります。

棟の端部は「冠止め」と呼んでいる瓦を施工します。

四方へ伸びる棟の場合は「四又」もあります。

「寄棟」仕様の屋根では「三又」と呼んでいる瓦を使用します。

「隅棟」の端部は「かっぽん」と呼んでいる瓦を施工します。

「棟金具」は、高さの調整が可能です

「冠瓦」を伝う水が堰き止められる事が原因での裏漏りを防ぐために、棟部の仕様に関わらず、必ず「棟部」と「瓦葺き部」は、離します(黄色)。

適切な開口寸法のために、前述の「まくら」や「芯木」の調整をします。

屋根の点検の際にも注意する部分です。

「三角冠」と呼んでいる形状です。シャープな感じがしますね!「冠瓦」に、性能の差はありません。

様々な形状や仕様に対応できます!

「乾式」は「洋風」「和風」共に、日本の屋根にマッチします。今後の安心の為にも、定期的な点検と、最適なメンテナンスをお勧めします!