奴葺き・やっこふき

2024年2月9日

4月29日付ブログ「軒先メタル」で「奴葺き」について触れたので、今回は、もう少し詳しく触れたいと思います。今回紹介する案件は「瓦の葺き替え工事」で、屋根の形状が全体を瓦葺きにする事が難しい案件でした。

今回は「ひらいた」という仕様で施工しました。ジョイント部が少なく済む点が長所です

「奴葺き」は、瓦屋根の端部などを「板金部材」で葺いた仕様です。意匠用の他に「瓦は斜めに葺けない」短所をカバーしてくれます。この部位では「軒先側」が狭く「大棟側」が広い形状になっています。

下地を平坦にする工程を経てから着工です

こちらは反対側で「軒先側」が広くなっています。施工前に「奴葺き部分」の下地を作ります。瓦の寸法に合わせて「端小舞」と呼んでいる部材で、立ち上がりを決めます。今回、手間は多くかかりますが、できるだけ「瓦葺き部分」を大きくして、見た目も美しく、できるだけ瓦の長所である「耐久性」「遮音性」が生かされるように施工しました。

足場を活用して、外壁のビス止め作業も行いました

高所かつ端部の作業なので、施工範囲が狭くても、作業床が必須ですね!

こんな所、足場がないと作業できません!

初めに、屋根の端部を覆う「唐草・からくさ」と呼んでいる部材を取り付けます。軒先に付ける唐草を「軒唐草・のきからくさ」写真のように左右の端部へ取り付ける唐草を「ケラバ唐草」と呼んでいます。雨水の裏漏りを防ぐ目的で、下地よりはね出して施工します。

屋根の端部の瓦の施工は「板金部材」の施工が完工してからなので、瓦工事は一時中断になります

あらかじめ、適度な大きさに加工しておいた部材を「ハンドローラー」と呼んでいる、道具で折り目を付けて、折り返します。

はね出した分は「唐草部分」への「折りしろ」です。「唐草」の「せり出し部」をしっかりつかむように折り返して施工します。

折り返した部材を組み合わせて葺いていきます。2重に折ってあるのは、重なりがつぶれすぎるのを防ぐ工夫で、職人さんの施工を無にしないためにも、継ぎ目には乗らないようにしたいですね!

固定する部位は「吊子」だけではありません

部材は重なり部分で「吊子・つりこ」という部材で固定します。「吊子」は「谷部」の「谷板」等でも使用します。「吊子」の耐久性を保つために屋根の下地合板は通常の4mmより厚い12mmを使用しました。

瓦葺き部分との境目の「端小舞」部分の立ち上がりです。「立ち上げ部の重なり部」は、軒先部分へ伸ばして、雨水の侵入を防ぎます。瓦の施工後は隠れて見えない部分です。

コーナー部分は「八重折・やちおり」という方法で折り返して施工します。板金屋さんの技術の証である技能士の試験では必須の項目です!専用の、45°で、切断できる鋏があるのですが、最近、試験では使用禁止になったそうです(笑)

「ひらいた」は、表面に凹凸が無いので、左右にも雨水が移動する可能性があります。危険個所は、コーキングでしっかり塞ぎます。

軒先方面は「パラペット」と呼んでいる仕様で「壁」の上部の「笠木」と呼んでいる部分からの雨漏りにも注意しないといけません!

雨水を流れる「道」を「軒先」までしっかり施工します。できるだけ「ジョイント部」を少なく施工したいですね!

下地を平坦にする工夫や工程も着工前に施工しています

順に板金部材を葺いて完工です

「板金葺き」が終わったら「袖瓦」を被せるように葺きます。

このようにして「斜め」になっている屋根を葺いていきます。「奴葺き」なら、どの様な形状の屋根でも葺けますね!

大巴の合端作業が見事です!

板金部材とのコラボで、どんな屋根も「スマート」に葺く事ができます!

僕達の仕事は「お客様の要望を叶える事」です。その為には「条件に合った最適なプラン」が必要です。初期費用だけではなく、将来的な視点からも、お客様にメリットのある提案をしていきたいです。

「谷部」の上は「雪止め瓦」を「列」にして屋根雪の負荷を支えます

僕達の仕事は、施工が終われば、みんな忘れてしまうような部分かもしれません。見方を変えれば、もう、お客様は考えなくて済むような仕上がりだという事で、忘れられても良いと思っています!

これからも、僕達はお客様に「良い意味で」忘れて頂ける、施工を目指していきます!