取り合い その2

2024年12月10日

先日、市街地にある案件で、屋根の点検をしてきました。

その案件での体験を基に、市街地で良く見られる問題点についてお話したいと思います。

弊社では、異なる部位との接続面を「取り合い」と呼んでおり、赤くマークした部位が「隣家との取り合い」になります。

「棟部」から「軒先」にかけて「冠瓦」が施工してあり、このような仕様を「下がり○○」と呼んでいます。○○には「冠瓦」の仕様名を入れており、今回は「平冠」と弊社では呼んでいます。

「金属板」は「瓦」の上が適当ですね

「大棟」と「下がり平冠」との「取り合い」です。

残念ながら「金属板」と「冠瓦」の位置関係が逆で、雨水が「冠瓦」の内部に入る形になっています。

赤い矢印部分から雨水が侵入します

「下がり冠」は、瓦の幅寸法が足りない時などに、開口部分を塞ぐ目的で施工されますが、カバーが不十分だと、雨漏りの原因となります。

隣家との「取り合い」が「外壁」と一体になっている場合も多くあります。

右側の案件で、雨漏りがするとの事で、点検に伺いました。

「外壁」と「瓦葺き」部分との接続面で施工されている板金部材を「アオリ」と呼んでいます。

「青」が水の流れで「赤色」は、雨水の侵入が疑われる部位です。

外壁に吹き付ける雨風の対応がメインになります。

天井に点検口が無かったので「下地」を取り外して確認しました

内部から確認してみました。「アオリ」のみの施工で、隙間が良く見えます。

特に「粉雪」が、天井裏に吹き込んで濡らすことが良くあります

暴風雨や吹雪の際には、吹き込む事が容易に想像できますね。

「雨漏り」ではなく「吹き込む雨風」が、屋内に侵入した例です。

隙間風が吹き込んでいました

「取り合い」を解体した事例です。

隣家との開口は解体したわけではなく、前述と同じように「アオリ」のみ施工した状態でした。

加えて、赤い矢印の部分は「小舞(こまい)」と呼んでいる下地材が「ハネ出して」施工してあるので、強度がとても弱いです。

このような部位では必ずオレンジ色の部分に「垂木(たるき)」と呼んでいる支持材を取り付けます。

角材を1本取り付けるだけなので、それほど手間ではありません。

隣家との開口部分もしっかりと塞ぎます。

屋根下地も「野地板」に替わりました。

下葺き材を立ち上げる事で、下地は完成です。

屋根の縦のラインは軒先に対して垂直ではなかったので、是正にも役立ちました

下地が完成した後、この案件では「はことい」と呼んでいる雨水を流す部材を取り付けました。

雨水は、軒樋を流れる雨水の落とし口である「上合(じょうご)」へダイレクトに入って行きます。

端部は「たれ」と呼んでいるカバーがついた「袖瓦(そでかわら)」と呼んでいる瓦が葺かれます。

「はことい」の段差と共に「たれ」が、雨水の侵入を防ぎます。

棟部です。

外壁の新調は同時施工の方が経済的です

吹き付ける雨水を止める作業の一つを紹介させて頂きました。

併せて、外壁面も、軒先まで全て新調されて綺麗になりました。

このように「雨水を止める」作業は、瓦葺き部分だけでなく付帯した工事と一体となって初めて完成します。

「アオリ」の「勾配」もありません

こちらは「アオリ」仕様で、板金部材はそのまま使用した例です。

このように「取り合い」でも適切な施工と管理が必要です。

これからもしっかりと対応したいです!