「取り合い」と「境界線」
屋根のメンテナンス工事の打ち合わせの際に、施工範囲について相談します。
その際に、施工範囲の「境界線」が「瓦葺き部分」となる場合があります。
写真の案件では、瓦葺き部分の途中に、新しい瓦と既存の瓦との接続部分があります(黄色のマーク部分)
既存の瓦と新しく葺き替える瓦が同じ寸法の場合は問題ありませんが、寸法が異なる場合は「開口」「隙間」が発生するので、瓦の組み合わせに注意した対応が必要になります。
弊社では、異なる部位との接続面を「取り合い」と呼んでいます。
時々、瓦葺き部分の「取り合い」で「瓦の組み合わせ」を無視した荒っぽい仕上がりを見かけます。
写真の案件のような場合では、開口部から下地が丸見えなので、対応をお勧めしています。
正しくは、瓦を切り合わせて、隙間ができないように施工します。
このように「取り合い」の施工には、適切な対応が必要になります。
大きさが異なる瓦を組み合わせる場合は「下がり○○(赤色)(○○には冠瓦の仕様名が入ります)」といった、瓦の開口を塞ぐ仕様が必要な場合があります。
「隅棟」を境界にしても良かったのですが冠瓦の脱着はとても容易な事から、将来的に続けて瓦の葺き替え工事を施工する際に「隅棟の解体を不要」にして「スムーズに着工できる」仕上がりにしました。
「下がり○○」は「瓦の幅」に対して「下地の幅」が広すぎて、瓦の左右の重なり寸法が足りない時にも採用されます。
「取り合い」は、適切に施工すれば全く問題ありません。
将来的に続きの作業が想定される場合、2023年11月1日付ブログ「分かれ道」でも触れましたが、できるだけ重複する作業を減らすことを考えて提案させて頂いています。
写真の案件では「境界線」を「棟部」にするか「谷部」にするか迷いましたが、谷部の周囲の作業を勘案して「棟部」を「境界線」とさせて頂きました。
雨水の流れや量を予測して施工する事が大切です。
「谷部」を施工して境界にする場合では、既に「取り合い」が完工しているので重複作業がありません。
「棟部」も「冠瓦」を再使用できる工法(乾式・強力棟工法)もあり、施工範囲の境界線に適しています!
斜めの棟を「隅棟」と呼んでいます。
「取り合い」の内、雨漏りに直結しやすい「隅棟」の取り合いです。
雨の流れを予想して、特に「伝う雨」に対応します。この部位については2021年11月10日付ブログ「縁を切る」で詳しく紹介しています。
「棟部」の途中で「取り合い」が発生するような案件では「のし瓦」が交互に積み重ねてありますので、段状に解体する必要があり、少し広い範囲の解体が必要になります。
状態や条件によっては「取り合い」を施工するよりも「棟部」全体を施工する方が適している場合もあります。
「外壁」と「棟部」との「取り合い」も大切な部分です。
雨水が「横方向(外壁方向)」へ流れないように注意して施工します。
「外壁の交換」も同時に施工したのでキレイに仕上がりました。
「のし瓦」を積む「在来工法」から冠瓦のみで施工する「強力棟工法」へ仕様を変更して施工した「取り合い」です。
既存の外壁はそのままなので、開口部分は板金部材で「取り合い」を仕上げます。
「外壁」と「瓦葺き部分」との「取り合い」については2021年10月19日付ブログ「瓦工事に付帯した板金工事の作品写真集」でも紹介しています。
既存の部材を加工したりして、できるだけ自然に見えるように施工します。
とはいえ、やっぱり先に瓦葺き部分を施工して後から外壁を施工する方がきれいに仕上がりますので「順序は瓦葺き部分が先」「外壁は後」が理想です。
写真は前の写真と同じ部位の内部です。
「冠瓦」と「外壁」との間に黄色で示した隙間が広すぎます。
赤いラインは「アオリ」と呼んでいる木部材とカバーする板金部材のラインです。
「冠瓦」が短すぎてカバーが不十分だったのか、オレンジ色で示した部分にコーキングの跡が見えます。
冠瓦は外壁に接触するまで差し込み、長さが合わない場合は、他の部分で調整して取り付ける事が望ましいと考えています。(手間を惜しんではいけません)
安心して頂ける作業とは、このような部位の対応を指します。
瓦葺き部分と、外壁との「取り合い」です。通常、下の屋根の方が「取り合い」が発生しやすいです。
写真は「はことい」と呼んでいる「取り合い」です。
直接工事には関係ない部分ですので、隣家に迷惑を掛けずに、できるだけ低予算が理想ですね!
2022年11月25日付ブログ「登り取り合い」でも、別の仕様で触れています。
リフォームにおいて、既存の部分と施工部分をつなぐ「取り合い」は、避ける事は出来ず、無駄な予算にもつながり易いので、慎重な現場の確認と十分な打ち合わせが必要です。
全体の工事費用に目が行きがちですが、使い方についてもしっかりと考え、分かり易い提案と説明を心がけていきたいです!