目の付け所(雨水が流れる所)

2024年4月18日

僕が住んでいる富山県南西部の「砺波地方」では、今年は比較的天候に恵まれ、成人の日も積雪は「0」です。お陰様で、屋根の点検も安全で、助かっています。

そこで、今回は、僕が屋根の点検の際に注意している部分について紹介します。

点検では「管理の問題」「劣化の問題」「施工方法の問題」「仕様の問題」「構造上の問題」を勘案して確認します。

雨樋の名称は2022年9月8日付ブログ「雨樋の名前」で触れています

屋根の上の「雨水の通り道」では、水量が多いので「雨漏りの原因」が起こりやすいです。写真は「雨樋」の雨水を下方へ流す「はいとい部分」です。今回「雨漏りがする」という相談を頂き、確認してみると…

「樋」が枝葉で詰まっていたため、雨水がオーバーフローを起こし、下地を痛めていました。「下地の腐食による瓦の落ち込み」で、逆水を起こします。

屋根だけでなく内装の工事も必要です。こちらは「管理の問題」ですので、現状を復帰し、今後の管理を適切にする必要があります。

点検の際には雨樋に「破損がないか」「水が流れるか」の確認が必要です。

「谷部」に「はいとい」があると更に「枝葉」が溜まりやすくなります。

写真の部位を「谷部」と呼んでいます。「谷部」は「枝葉などが溜まりやすい」「雪が落ちずに負荷がかかる」特徴があります。特に写真の形状は「屋根雪が溜まりやすい」と言えます。

写真をよく見ると「谷部」を境に「雪止め瓦」が「施工してある手前」と「施工してない奥側」で、仕様が異なるのが分かるでしょうか?

今年は少なめです。2階の屋根雪が1階の屋根へ落ちる事も想定します

「谷部」で使用されている三角形に加工された瓦を「うろこ瓦」と呼んでいます。

大雪の際には積雪の「軒先へのズレ」による負荷で「うろこ瓦」が「押される」「引っ張られる」事による「下地の劣化・破損」瓦の「ズレ」や「ワレ」を起こす事があります。氷河が流れる仕組みと同じです。

写真では「谷部」の「右側の屋根雪」が「左側の屋根瓦」を「横から押す」荷重ですね

特に「谷部の左右で勾配や屋根の長さが異なる」「雪止め瓦が施工していない」「片側のみ雪止め瓦施工」と言った案件では「屋根雪による不均等な負荷」が「谷部」で発生します。

「右側のみが急勾配」で左右とも「雪止め瓦施工無し」でした。右側の積雪の圧力により「左側の瓦が割れる」事例でした

この場合は「仕様の問題」ですので「再発する可能性」があり「復旧作業」と共に「仕様の変更」も検討です。

「谷部」に施工してある板金部材を「谷板」と呼んでいますが、他の説明でも繰り返し触れているように「腐食による孔(赤)」が見られます。この場合は「劣化の対応」ですので、応急的には「コーキング」で対応しますが抜本的には「交換」です。

屋根の清掃はこまめにしましょう

こちらは「谷部」で枝葉が溜まり、周囲へ雨水があふれ出した「管理の問題」です。実績「5」「22」で紹介しているように、「枝葉が侵入しにくい」対応をお勧めしています。

少しこするだけで、すぐに解決しました。

こちらは「こけ」が、ダムを作って、雨水の流れをせき止めていました。通常の雨は大丈夫でしたが、大雨の際に堰き止められ、周囲に雨があふれ出しました。

似たような事例を2022年11月14日付ブログ「推測」でも紹介しています。

特に「棟の下」や「左端の瓦」で起こりやすいです

瓦の上を流れる雨水は中央部の一番低い「谷芯」を流れますが、瓦の左右の勾配も重要です。

施工時は、瓦が傾かないように工夫がしてありますが、経年劣化で傾いてしまう事があり、メンテナンス工事で適切な勾配へ修正します。

棟部のメンテナンス工事の際に修正します

棟部の重みで右側に勾配がかかり、内部に雨水が侵入している恐れがあります。

はぐらなくても「想像」できます!

写真の案件では「隅部(右)」と「谷部(左」が近接しており「下流部にかけて幅が狭い」ので「枝葉が下流で堆積」して周囲に雨水があふれ出し「隅部」の構造材である「隅木」を腐食させていました。

「主要構造部材」については「交換が困難」なので「定期的な点検」「早めの対応」をお勧めします。

この場合は「構造上の問題」なので「谷部を広く」して「枝葉が溜まりにくい」施工をしました。

屋敷林等がある場合は併せて、適切な枝打ち等も考えたいですね!

「谷部」のトラブルは、下地の腐食に即つながります。内装にも被害が及びますね!

「谷部」の雨水が瓦の上を流れるような構造を「棟違い」と呼んでいます。

その際は「谷部の水を瓦の谷芯へ流す」ためにそれぞれ合わせる事が重要になります。

幅を調整するので「幅調整瓦」と呼んでいます。

リフォームの案件だったので、黄色の部分で「幅の広い瓦」緑色の部分で「幅の狭い瓦」を使用して葺き直し、適切に雨水が流れるように修正します。

幅を調整するための瓦については2022年8月2日付ブログ「続・屋根の寸法出し」で、紹介しています。

瓦葺き部分で、このような部分があれば…

大変危険な作業が多いので「足場」等の適切な作業環境を構築します

このように、下地の腐食がある事が予想できます。

写真のように「瓦葺き屋根の端部で板金屋根が葺いてある」屋根を「奴葺き・やっこふき」と呼んでいます。

屋根を地形に例えると「川の流れ」前述の「谷」があり、写真の「滝壺」があります。

「滝壺」は「樋が壊れた」時や「設置していない」部位でも発生します。住宅では、できるだけ「滝壺」が無いようにしたいですね!

「軒先」の天井を「のきてん」と呼んでいます

上の写真の裏側です。

今回「問題を分類して紹介した理由」の1つに、最近よくご相談を受ける「損害保険」があります。

保険の適用は「災害による損壊」に限られますので「劣化していた部位が○○で損壊した」という流れで「プロセスの解明」や「説明」が重要と考えています。

今回、多くの点検項目の中から「雨水の通り道」についてお話しましたが、とても奥が深く難しい問題で、職人さんが全力で取り組んだ結果、うまくいかなかった部分もあるという事はご理解頂けたらと思います。

これからも、勉強です!