棟土と白華現象(はっかげんしょう)

2024年4月18日

今日は、屋根から白いものが見えるとのお声掛けを頂きまして、屋根の点検に伺いました。

そこで、今日は「棟部」の「棟土」と「白華現象」についてお話したいと思います。

「棟土」とは「棟部」の内部で使用している「粘土状の土」で、かつては「かべどろ」と呼んでいる「山土」に「わら」「すさ」等を、混ぜ込んでだ商品を使用していましたが、20年~30年ほど前から、代替品として「なんばん」という商品が使われ出しました。

関連する説明を2023年1月7日付けブログ「瓦屋さんの日常 棟工事」でも触れています。

今回紹介する「白華」とは「エフロエッセンス」とも呼ばれ「なんばん」や、後述する「面戸瓦」部分を塞ぐ「漆喰」の表面に表れる白さで、成分は、石灰(炭酸カルシウム)です。セメント業界では「セメントのアク」とも呼ばれています。

写真のような部位を「棟」と呼んでおり、「のし瓦」を交互に積み重ねた構造で、内部に「なんばん」が施工されています。色々な商品が発売されていますが基本的な仕組みは一緒です。(表面は漆喰で仕上げ)

施工の様子は、このブログの2023年1月7日付ブログ「瓦屋さんの日常」をご覧ください。

シルガードは商品名です

「なんばん」の製法は…

①石灰石を窯で900~1,000°Cで焼きます。(生(き)石灰と言います)。

②生石灰に、水を注水化合させ消化させます。

③決められた水量を化合させると生石灰が反応を起こし、発熱しながら膨張します。

④冷却後に細かく砕きふるい分けした粉末が消石灰です。

⑤袋詰めして製品にしたのが、写真の「なんばん」です。

棟に上げられた消石灰は、炭酸ガス(二酸化炭素)と反応し、水分を飛ばしながら結晶して、炭酸カルシウムに戻ります。最も安定した状態(石灰石(CaCO3)に戻るわけです。生成の過程を逆に体現した形ですね。

棟部では「白華」が原因で瓦などを汚してしまう事があります。

セメントと似ていますが、セメントは「水硬性」であるのに対し「なんばん」は「気硬性」という違いがあります。その為、施工後の天候による影響を大きく受ける事が悩みの種です。

「なんばん」の水分全てが「遊離水」であることから、セメントに対して伸縮が大きく、(水分が抜けた部分は空洞になる)瓦と隔離してしまったり、水分が継続的に表面から蒸発していく際に、瓦の表面に漏れ出して、汚したりする事も悩みの種でもあります…

屋根の上では、数カ月かけて徐々に硬化していきますね!

目に見えない内部は「なんばん」目に見える表面は「漆喰」で仕上げます

「なんばん」を使用した案件では、蒸発の過程で、内部の水分が表面へ移動するに伴って、石灰分も引っ張り出されることにより「白華現象」が起こります。写真の、棟部の下の三日月形の部位(面戸瓦)から漏れ出す事が多く、今回の判断も、汚れの位置による判断になります。尚、今回の点検では「白華現象」による、瓦の汚れと思われる部位はありませんでした。

以上の理由から「漆喰」の色も「白色」と「黒色」がありますが「黒色」も徐々に「白く」なってしまいます。

青が水の流れです

「かべどろ(緑)」です。(今でも「かべどろ」は製造されています)。「棟土」が漏れ出さないように「面戸(赤)」で、フタをしています。

現在では、前述のように「面戸」の外側に「漆喰」を施工して「棟土」の流失を防いでいます。

弊社が「かべどろ」を採用していた頃は、水を加えて柔らかく練り込んだ後にセメントを混ぜて、攪拌した後に施工しており、現在でも解体にも苦労するくらいです…(粘り気があり格段に頑丈です)

赤色の矢印部分で「棟土」水と触れてしまいます。

「棟部」の一番上に施工されている瓦を「冠瓦」と呼んでおり、屋根の点検の際は取り外して「棟土」の状態を確認します。

この案件の「なんばん」は、施工後の劣化により、青色のラインまでだった「棟土」が砂状に黄色ラインまで広がり、横方向からの暴風雨の際に雨水を内部へ引っ張り込む「毛細管現象(水色)」による雨漏りが発生していました。

同じことが「のし瓦」を積み重ねた部分でも起きていると推測されます。

案件によっては「冠瓦」を幅の広い商品に交換しています。

この案件では「なんばん」が機能しており、黄色部分で示した部位で、雨水と触れないように適切な距離が保たれています。

「棟土が雨水と触れないようにする」事は、屋根にとって大切な事です。

弊社では「かべどろ」には「セメントを混ぜ込み」「冠瓦」の下には「モルタル」を使用していたので問題は少ない方です

「棟土」は、青色で示した「緊結線」「緊結穴」からも徐々に浸透していき、水で触れる事で、少しずつ砂状に変化していきます。

反対側が見えます

既に「棟土」が流失して空洞になっている案件も見かけます。

「棟土」を使用する仕様を「乾式」と呼んでいます

現在では、雨水の侵入を防ぎ、緊結線の劣化を無くすために仕様を問わず、冠瓦の緊結には専用の「パッキン付きビス」を採用しています。

「棟土」の性能も飛躍的に向上し「砂状」にはなりにくくなりました。

詳しい製品情報は、弊社HP 下部の「馬場商店」さんの、バナーをクリックして下さい!

解体が簡単なので現場としては助かります(笑)

たまに「こわ」と呼んでいる「木材」や「竹材」を使用して積んである棟も見かけます。

強度が足りないので、工法としては疑問符です。

最近では「棟土」や「のし瓦」を使用しない「乾式」と呼んでいる仕様も増えてきました。

「湿式」に比べ見た目が大きく異なります。

「毛細管現象」「のし瓦の緩み」「のし瓦のズレ」等が無く、ランニングコストに優れます。

点検のついでに、ペンキで瓦の欠け部分をタッチアップ。

汚れた瓦も、キズが付かないように優しく磨いて、目立たないようにしました。お客様には、屋根に気を配って頂いて、とても嬉しく思いました。