今日まで、弊社では、既存の瓦を再使用した「湿式 棟部 メンテナンス工事」を施工させて頂きました。
基本的には「再施工」で、仕様は元に戻す作業ですが、少し内容を変更した部分があったので、紹介させて頂きます。
「棟部」は古来から伝承されてきた「湿式」と呼んでいる「鬼瓦」「のし瓦」「棟土」を使用する仕様でした。
作業については、弊社HP 2023年1月7日付ブログ「瓦屋さんの日常 棟工事」で、紹介しています。
着工前の点検時の写真です。
軒先と平行な棟を「大棟」斜めの棟を「隅棟」と呼んでいます。
「大棟」と「隅棟」が一体となって、屈折した部位がある「肘棟(ひじむね)」と呼んでいる部位があります。
弊社では、異なる部位との接続面を「取り合い」と呼んでおり、矢印の「取り合い」では、防水の為に「モルタル」で対応してありますが・・・
「取り合い」では、開口部分があり、効果は薄いようです。
「棟部」の一番上に施工されている瓦を「冠瓦(かんむりかわら)」と呼んでおり、丸い形の仕様を「江戸(えど)」「丸冠(まるかんむりかわら)」通称「丸(まる)」等と呼んでいます。
「隅棟」は、どうしても軒先方向へ荷重がかかり「ズレ」が起こりやすく「モルタル」で「取り合い」の防水を維持し続ける事は難しいと言えます。
開口が発生する原因として「構造的に隅棟が大棟の内部に組み込まれていない」という事が原因です。
緑色の矢印で示した「のし瓦」の緊結線を外部に露出させる事も、劣化を早める事につながるので、内部で緊結したい部位です。
対応として「隅棟」の「冠瓦」を高さが低い「伏間(ふすま)」「平冠(ひらかんむり)」通称「ひらかん」等と呼んでいる仕様に変更して「隅棟」を「大棟」の内部へ組み込ませます。
併せて「大棟」の「のし瓦」の段数を高く変更します。
今回は「4段」から「5段」へ変更され「隅棟」の上に「のし瓦」を通す事ができました。
鬼瓦の寸法に棟部の高さを合わせるために「大棟」でも「冠瓦」の仕様を「伏間」に変更します。
「隅棟」が「大棟」の内部へ組み込まれ、開口が露出する心配が無くなりました。
「伏間」に交換する事によって、カバーできる範囲が江戸(約15cm or 約18cm)に比べて、広くなる(約23cm)というメリットもあります。
「寄棟」仕様の「大棟」で使用される「鬼瓦」を「座鬼(ざおに)」と呼んでいます。
再使用に適さなかったので「新調」しました。
「棟部」は「のし瓦」は交互に積んで、下方の瓦で雨水をキャッチしますが「隅棟」は斜め方向に雨水が走りやすく、特に「冠瓦」の目地は「雨水」の侵入経路になりやすいために慎重に施工します。
「肘棟」のアップです。
「冠瓦」の「目地」の内部にはコーキングを施工してきれいに収まりました。
年月が経てば瓦の汚れも徐々に目立たなくなっていきます。
「肘棟」には「谷部」と呼んでいる板金部材の部位が付帯します。
僕の営業活動は、基本的には「お客様の要望通り」がモットーですが少し「瓦を交換」「仕様の変更」を提案させて頂く事により、安心して頂ける作業が出来ました。
皆様のご理解、ご協力に感謝です!