ブログ きのえ

取り合い その2

先日、市街地にある案件で、屋根の点検をしてきました。

その案件での体験を基に、市街地で良く見られる問題点についてお話したいと思います。

弊社では、異なる部位との接続面を「取り合い」と呼んでおり、赤くマークした部位が「隣家との取り合い」になります。

「棟部」から「軒先」にかけて「冠瓦」が施工してあり、このような仕様を「下がり○○」と呼んでいます。○○には「冠瓦」の仕様名を入れており、今回は「平冠」と弊社では呼んでいます。

「金属板」は「瓦」の上が適当ですね

「大棟」と「下がり平冠」との「取り合い」です。

残念ながら「金属板」と「冠瓦」の位置関係が逆で、雨水が「冠瓦」の内部に入る形になっています。

赤い矢印部分から雨水が侵入します

「下がり冠」は、瓦の幅寸法が足りない時などに、開口部分を塞ぐ目的で施工されますが、カバーが不十分だと、雨漏りの原因となります。

施工の際には、防水をしっかりと確保した下地から施工します。

しっかりと開口部分をカバーする施工が大切です。

瓦の色が変わっている部分があります。

これは使用不可の瓦は交換したことに加え「幅の広い瓦」を新しく葺いて開口部分を小さくする工夫をしたためです。

隣家との「取り合い」が「外壁」と一体になっている場合も多くあります。

右側の案件で、雨漏りがするとの事で、点検に伺いました。

「外壁」と「瓦葺き」部分との接続面で施工されている板金部材を「アオリ」と呼んでいます。

「青」が水の流れで「赤色」は、雨水の侵入が疑われる部位です。

外壁に吹き付ける雨風の対応がメインになります。

天井に点検口が無かったので「下地」を取り外して確認しました

内部から確認してみました。「アオリ」のみの施工で、隙間が良く見えます。

特に「粉雪」が、天井裏に吹き込んで濡らすことが良くあります

暴風雨や吹雪の際には、吹き込む事が容易に想像できますね。

「アオリ」を取り外してみました。

内部が良く見えます。

隙間風が吹き込んでいました

隣家との開口は解体したわけではなく、内部は空洞でした。

加えて「小舞(こまい)」と呼んでいる下地材が「ハネ出して」施工してあるので、強度がとても弱いです。

前回、なぜ取り付けなかったのか不思議です

「垂木」(たるき)を1本取り付けて強度を確保します。

隣家との開口部分もしっかりと塞ぎます。

屋根下地も「小舞」から「野地板」に替わりました。

下葺き材を立ち上げる事で、下地は完成です。

この後の、仕上げ方は大きく分けて2通りあり、これは「はことい」と呼んでいる仕様です。

側溝のような形状で雨水を軒先方向へ流します。

屋根の縦のラインは軒先に対して垂直ではなかったので、是正にも役立ちました

軒先部分では、流れた水を樋へ流す「壁止まり」と呼んでいる部材を取り付けました。

雨水は、軒樋を流れる雨水の落とし口である「上合(じょうご)」へダイレクトに入って行きます。

「伝う雨」が雨漏りの原因となる恐れもあります

「壁止まり」には、雨が伝って外壁を濡らすのを軽減する役割もあります。

端部は「たれ」と呼んでいるカバーがついた「袖瓦(そでかわら)」と呼んでいる瓦が葺かれます。

「はことい」の段差と共に「たれ」が、雨水の侵入を防ぎます。

棟部です。

外壁の新調は同時施工の方が経済的です

併せて、外壁面も、軒先まで全て新調されて綺麗になりました。

「はことい」「アオリ」どちらを採用するかは「現場の条件」で使い分けています。

もう一つは「アオリ」仕様と呼んでいます。

「アオリ」仕様については、2022年11月25日付ブログ「登り取り合い」で、詳しく紹介しています。

「アオリ」の勾配が大切です

板金部材は、瓦の形状に合わせて加工して隙間ができないようにしてあります。

ここまで丁寧に施工している案件はあまり見かけません。

「アオリ」の「勾配」が足りません

こちらは板金部材は再使用した例です。

どの仕様でも「下地」「下葺き」から「板金工事」まで、一体となった丁寧な施工が大切です。

これからもしっかりと対応したいです!

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