一病息災
7月12日から13日にかけて、僕たちの住んでいる富山県とお隣の石川県を中心に激しい雨が降り、全国ニュースでも大きく取り上げられています。弊社も、雨漏りのご相談を数多く頂いています。
連絡を受けて、雨漏り箇所を拝見。瓦屋根の持つ「静音性」が、雨漏りの音などを聞こえやすくしてくれます。
数年前に、広島県で土砂災害があった際に、瓦屋根の家では、屋外の音がよく聞こえた為に、避難開始を早める事ができたと聞いたことがあります。
よく見ると、天井板がふやけています。
窓の位置などを目印に、目星をつけて早速屋根に登ってみます。
どうもこのあたりのようです。
順に瓦をはぐってみます。棟から8列目と9列目の間から、下地が濡れています。
下地に侵入した雨は「瓦桟」に堰き止められて横へ移動します。「瓦桟」の上を乗り越えるくらいの雨量だったようですね。
下葺き材の状態により、下地から屋内への侵入口が、別の場所にあったり、そのまま軒先まで排出されている事もあります。このような状態を「下葺き材の上を雨水が走る」と表現しています。
いろいろな場所をはぐって、下地の濡れがないか確認します。棟から8列より上では濡れが見られない事から「棟部」からの侵入は無いようです。
雨漏り箇所の上には「雨樋」の雨水を下方へ流す落とし口である「上合・じょうご」があり、詰まりとズレを確認しました。先日の大雨で、樋から溢れたり、ズレた部位から漏れたりしたのではないかと考えました。
樋の状態が不良の場合、同じ場所に継続的に大量の水が落ち続けるので、雨漏りの原因となりやすいです。
対応として樋の「ズレを直し、清掃する」をしてみます。樋に入る堆積物は「屋敷林の枝葉」に加えて「スズメが運んで来るワラ」などが多いです。
はぐった瓦は「銅釘」で緊結してあったので、より丈夫で長持ちする「ステン釘」で緊結し直します。
ところで、葺いてある瓦が赤くなっていますよね?これは「パンク」と呼んでいる瓦の表面が凍害等で剥離してしまう現象で、富山県では平成の初め頃までの三州産地で製造された瓦で多く見られます。
瓦に隙間ができたり、割れてしまったりするだけでなく、瓦の裏側など、目に見えない部分も剥離している事が多いです。
現在、技術の進歩により改善され、弊社採用の商品では「製品の欠陥による損壊」については「60年間保証」です。新築においては、保証書も発行できます。
「60年保証」については、弊社HP 2023年2月19日付ブログ「60年保証」で詳しく触れています。
谷部では、枝葉が溜まると、水の流れが阻害され、雨漏りや部材の劣化の原因になります。
雨漏りの点検では、雨水の侵入経路の特定が重要になります。そのためには「下地がまだ濡れている状態」で、点検する事が一番の近道です。幸いにも、今回は、連絡を受けてから30分程度で侵入箇所を視認でき、次回、大雨が降った際に今回の対応の結果を確認する事ができます。
お客様からの聞き取りでは、いつも雨漏りがするのか、大雨の際だけなのか?といった点がポイントです。大雨の際だけの場合、ポジティブに考えるならば、家の問題点や弱点を知るきっかけになった事だと思います。
「一病息災」一つくらい持病があった方が、健康に気を付け、かえって長生きできるといった意味ですが、建物にも同じような事が言えるかもしれませんね!
そのためにも、お客様には「雨漏りを発見したら乾く前に連絡」と「家の弱点を普段から気にかけておく」をお勧めしたいと、今日の点検を終えて思いました。