箕甲・みのこ・下がり丸

2024年2月11日

先日より「みのこ」と呼んでいる仕様の屋根を施工させて頂いています。僕達が住んでいる「砺波地方」では、良く見られる仕様で、職人の腕の見せ所でもあります。今回は「みのこ」についてお話したいと思います。

「みのこ」は屋根の端部に勾配を付けて「みのこ瓦」を葺いた仕様です。1列から3列くらいまで見られ、今回は2列の仕様で「二枚みのこ」と呼んでいます。

「みのこ」では、下地の状態や勾配がとても重要になります。今回は、勾配を調整し、新たに「垂木」を増設しました。

瓦の一番高い部分を「桟芯・さんしん」低い水が流れる部分を「谷芯・たにしん」と呼んでいます。写真では、左側を「かぶせ側」右側を「差し込み側」と呼んでいます。

「みのこ」では「左右上下」に勾配が付きますので、差し込み側へ雨水が流れないように注意が必要です。前述の下地へのこだわりは、「雨水の流し方」「屋根の見栄え」へのこだわりです。

「みのこ瓦」と「瓦葺き部分」の「桟芯」がぴったり合わせるように葺く事が、雨水の侵入を防ぐ重要なポイントになります。写真では、最下部の「みのこ瓦」及び「右となり」の瓦において、差し込み側へ雨水が一番流れにくい葺き方で施工してあります。その為には、瓦葺きの際の墨付けを「みのこ」の「桟芯」に合わせて施工する事が必要になります。屋根の形状に合わせた「割り付け」は、職人の技ですね!

瓦の「葺き替え工事」でないと、ここまで対応する事は難しいです。

屋根の大きさは決まっているので制約がある中での施工になります

「みのこ」と「鬼瓦」のシルエットいう部分も重要になります。割り付けや瓦の幅を調整するなどして、一番良いバランスを見つけます!「鬼瓦」は「みのこ鬼」と呼んでいる種類で「みのこ瓦」の「頂部」は「トンビ」「追いかけ」という瓦で納めます。鬼の下では瓦の切り合わせ作業(合端作業)があり、職人の腕の見せ所です。

下葺き材も最奥部まで施工します

「みのこ」と「屋根面」の取り合いは雨漏りの原因となり易く、様々な工夫をしています。写真は、奥まで瓦を葺くために「破風板」という部材を切断して、最奥部まで瓦を葺くためのスペースを確保している所です。

奥の奥まで妥協しません!

右側の下がり丸は「みのこ」の隙間を塞ぐ、左側は「瓦の幅調整と美観」が目的です

「みのこ」の形状から生じる隙間を塞ぐために「下がり丸」と呼んでいる「冠瓦」を施工する必要があります。「みのこ」部分では「隙間を塞ぐ」為に採用しますが、他の部位でも「瓦の幅寸法の調整」「美観的に美しい」等の理由でも採用されます。端部が、屋根の途中までの場合は「半月」軒先までの場合は「丸端・まるはな」等と呼んでいる瓦で仕上げます。

「下がり丸」は防水の為に「面戸」という素焼きの蓋の役目の瓦とスポンジを施工し、冠瓦を芯木にビスで緊結します。

内部の「葺き止め」部分は「松川のし」という仕様の瓦を採用しました。日本の伝統的なデザインですね!

今では新築で施工されることはめったになくなってしまった「みのこ」ですが、技術の伝承はもちろん、伝統文化の継承の為にも大切にしたい仕様です。

僕の提案を聞いて頂いたお客様に感謝すると共に、最高の仕上がりでお応えしなければと改めて思いました。