先日より、棟のメンテナンス工事を施工しました。その現場で、きれいな鬼瓦と出会いました。
屋根のシンボルと言えば、やっぱり「鬼瓦」ですよね!という訳で、今回は、鬼瓦について触れてみたいと思います。瓦の名称は、様々なので、弊社での呼称とします。
「鬼瓦」は「棟部」の端部を塞ぐ「蓋」ですが、邪気を追い払う「おまじない」としての一面もあります。
どのような願いを込めた鬼瓦なのか考えるのも楽しいです!
写真は、弊社が27年前に施工した神社で使われていた鬼瓦です。みんなの思いが込められたモニュメントになりました。
使用済みの鬼瓦を飾ってみるのもいかがでしょうか?
家族をずっと見守ってきた「鬼瓦」です。正に「プライスレス」ですね!
デザインで共通している事は「足」に該当する部分に「雲」がデザインされている所です。「水」を連想させることから「火災予防」のおまじないだと考えています。
「角」は「鬼」の角でしょうか?
鬼瓦の呼び方は「使用される部位」と「仕様」で呼び方を変えます。
写真のように、屋根の頂点に該当する部位を「大棟」と呼び、使用される鬼瓦を「跨ぎ鬼・またぎおに」と呼んでいます。
鬼瓦の、下の丸い瓦を「巴瓦・ともえかわら」と呼んでいて「またぎ」部分で使用されるので「またぎ巴」と呼んでいます。「鬼瓦」と「巴瓦」はコンビですね
鬼瓦の仕様は「海津・カエズ」と呼んでいる鬼瓦で、新築の案件でよく採用されています。
「角」が無いタイプを「クラ鬼」「坪鬼」と呼んでいます。
鬼瓦の下辺は「大巴瓦」の形状に合わせて丸くなっています。
「鬼瓦」は寸法別になっていて6寸(181.8mm)タイプの製品を別に「中鬼(ちゅうおに)」とも呼んでいます。
3本の角が特徴の種類を「御所鬼・ごしょおに」と呼んでいます。
「みのこ」仕様の屋根では「みのこ鬼」と呼んでいる仕様に変わります。
先程は、鬼瓦の下の丸い瓦を「マタギ巴」と紹介しましたが「みのこ」仕様の場合は「トンビ」
仕様によっては「追いかけ」がセットになります。
さらに大きくなると、いくつかのパーツに分かれて制作し、組み合わせて施工していきます。
住宅では「三つ切」が多いですが、神社仏閣などでは20を超える事もあります。
「三つ切鬼」の下に「鬼台」「敷台」等と呼んでいる瓦を取り付けた例です。
「鬼瓦」の大きさ(高さ)に合わせて棟の高さも変化していきます。
「寄棟」と呼んでいる形状の屋根の「大棟」では斜め方向の棟である「隅棟」が形成されます。
「座鬼」と呼んでいる瓦が使用されます。
鬼瓦の下には「座布団」と呼んでいる「台」が施工されます。
「座布団」の施工は「合端作業」と呼んでいる、瓦の切り合わせ作業が付帯してとても手間のかかる作業ですが、職人さんの個性が出て、腕の見せ所です。
鬼瓦の仕様は「若葉カエズ一文字」と呼んでおり、子孫繁栄を願った文様と聞いています。
「合端」については2022年3月7日付ブログ「合端」でも紹介しています。
純粋には「鬼瓦」とは呼べませんが「三角錐」のような形状の屋根では「たちもん」と呼んでいる瓦を使用します。
屋根の上から家族を見守ってきたこの「たちもん」は、メンテナンス工事に伴い、屋根材としての役目を終え、モニュメントとして庭を彩りながら、家族を見守っていました。
「隅棟」の軒先側では「隅鬼(すみおに)」「隅巴(すみともえ)」が使用されています。
「打ち出の小づち」は商売繁盛、家内安全でしょうか?
鬼瓦の周囲には荷重がかかるので、しっかりと緊結します。
龍をあしらっています。火事除けのおまじないですね!
屋根の端部の「庇」の部分で小さな「大棟」がある部位を「折り返し」と呼んでいます。
この案件では「鬼瓦」の代わりに「下がり」と呼んでいる瓦が使用されていました。
鬼瓦と同じように、無地から文様入りまでいくつかの種類があり、こちらは「菊水」と呼んでいる文様です。
こちらはかわいい「恵比須様」ですね。
「葺き替え工事」でしたが「鬼瓦」は再使用させて頂きました。
偶然ですが、施工当日は「獅子舞」の日で、心なしか、更に顔がほころんでいるように見えました。
「恵比須様」と対で設置されていた「大黒様」です。
このような工芸品のような瓦は、問題がなければ、色を塗り直すなどして、これからも家族を屋根の上から見守って頂く事もできます。
「隅鬼」の下に施工される三角毛の瓦を「隅切・すみきり」「切隅・きりすみ」と呼んでいます。
「隅鬼」「隅巴」「隅切」はセットですね!
神社や仏閣などでは特殊な仕様も見られます。
お参りに行く事があればぜひ、屋根を見てみて下さい。
「鬼瓦」「のし瓦「棟土」等を使用しない仕様を「乾式」と呼んでおり「棟部」では「冠瓦」と「丸止め」が使用されます。
「湿式」では「座鬼」が使用されていた部位では「三又(みつまた)」
「たちもん」が使用されていた部位では「四又(よつまた)」が使用されます。
「隅棟」の端部では「かっぽん」と呼んでいる瓦を使用します。
写真では「切隅瓦」を使用していますが・・・
左右の「隅切」が一体となった「隅トンビ」と呼んでいる瓦を使用する事もあります。
「乾式」の棟では「鬼瓦」の役割を「丸止め」「かっぽん」が担います。
「入母屋仕様」の屋根では「かっぽん」「丸止め」両方使用します。
「隅棟」の「軒先」が「袖瓦」の場合は「菱巴・ひしともえ」と呼んでいる瓦を使用します。
左右があり、上から見た方向で区別し、写真の場合は「右」となります。
「菱巴」を下から見た写真です。
取付に際して、雨樋を短く切断したのでこの後「止まり」を取り付けました。
このような棟を「折り返し」と呼んでいます。
わが家も無病息災を願って、役割を終えた瓦を祀っています(笑)
写真は「鯱」なので間違いなく火除けです。
色々な願いを込めた「瓦」。家を守りながら、私達を見守って下さっている存在ですね(笑)