縁を切る

2024年2月16日

「縁を切る」なんて、びっくりされるかもしれませんが、屋根では大事な話です。

写真の案件は、施工後1年4カ月くらいです

先日、屋根の点検をさせて頂きました。点検の際に注意する部分に、写真のような部分があります。写真の部分は「妻部・つまぶ」と呼んでおり「破風板」という板が取り付けてあります。屋根では、至る所で「雨が伝って」裏漏りを起こす部分があり、点検では、その対策が十分とられているかが重要になります。

写真のように「破風板」には、段を付けてあるのが分かると思います。段を設け「雨水が伝うのを切る」事が重要です。今回の「縁を切る」というのは、色々な「伝ってくる雨水」から、縁を切るというお話です。

縁を切る工夫は、屋根以外の色々な部分にもありますが、瓦部分について紹介したいと思います。

破風の下に「破風板」を伝う雨水が内部へ侵入しないように、金属の板を差し込んであります。「袖瓦」には、屋根下地を保護するために「たれ」と呼んでいるカバーがついていますが「たれ」には突起物が見えます。突起物を「紐・ひも」と呼んでおり、意匠用の目的の他に「たれ」を伝う雨水を切る役割があります。「下地」と「たれ」を離して葺く事と「瓦の紐」によって、雨水と縁を切ります。

黄色で示した部分を「登り」使用されている部材を「雨押さえ」オレンジ色で示した部分を「取り合い」緑色の部分が前述した「破風板」と呼んでいる部位です。

写真のような屋根の形状を「棟違い」呼んでおり、施工が不十分な場合、「破風板」を伝う雨水が内部に侵入し、雨漏りの原因となります。写真の案件では「破風板」の下で、下地が腐食し、瓦の落ち込みが確認できます。

雨水が伝うので、水の流れを考えます。赤い部分がヤバいですね…

黄色い線が、瓦の分水嶺(桟芯・さんしん)です。雨水は緑色の雨水が流れる部位(谷芯・たにしん)へ向かって流れるので、赤い部位では、分水嶺を超えて左側へ雨水が流れるようにしないとダメですね!

下地が腐食して、下地が空洞になっていました。

ちょっとした板金工事で、すぐに改善する事ができました。

併せて、赤い部分で棟のメンテナンス工事も施工させて頂きました。

雨水の流れ方を想像する事が大切です。

「棟違い」の防水対策の一コマです。「新築」「リフォーム」に関わらず、下地から、下葺き材やハイロールというシールを重ねて張って、「破風板を伝う水」が、内部に侵入しないように工夫しています。弊社では、「棟違い・取り合い工事」と表現しています。

写真は「下がり丸」と「隅棟」と呼んでいる部位です。「冠瓦」の右側で、勾配を付けて「みのこ」と呼んでいる瓦を葺いてあります。

このような屋根の形を入母屋造りと呼んでおり、斜めの棟を、隅棟(すみむね)と呼んでいます

「隅棟」と「屋根面の接続面」は「雨漏りの原因になりやすい箇所」なので、注意して点検します。塞ぐ位置(写真では白色の部分)を「破風板より奥」へすることが「縁を切る」事につながります。「破風板」の裏は「小動物の侵入箇所にもなりやすい」ので併せて対応します。弊社では「破風板・隅棟 取り合い工事」と表現しています。

この案件でも漆喰は「黒」が使用されていますね

「みのこ」仕様の「取り合い」です。「雨が伝う」のを防ぐために多くの段差を付けています。

写真の案件では「壁際の瓦の雨水が、壁側に流れる」ようになっていますね。前述のように「雨押さえ」は、瓦の分水嶺である部分「桟芯・さんしん」より外側まで、延びていてほしい部分です。外壁を、カバー工法で施工した際に起きやすい事例です。

この部分については、2022年11月25日付ブログ「登り取り合い」で紹介しています。

軒先瓦にも「たれ」があります。

軒先の瓦が、屋根の下地から少しはみ出して葺いてあるのも「雨水を切る」為です。

「棟部」の「のし瓦」が、少し土台より「はみ出し」「屋根面に葺いてある瓦と離れている」のも、雨水を切る為です。「のし瓦は、水が横へ伝う可能性」があり、緩みが出ると「下に葺いてある瓦と接触を起こして、伝ってくる水が堰き止められて、雨漏りの原因になる」事があります。

写真は、雨漏りの対応として既存の「棟部の面戸部分」に、漆喰を上塗りした案件です。雨水と縁を切るための大切な「のし瓦のせり出し」がなくなってしまい、雨水が、新たに塗った「漆喰部分」を伝って内部へ引き込んでしまいますので、逆効果です。

写真は「谷部」で、雨漏りを防止するために「モルタル」を塗った例です。同じく雨が伝ってきそうですね!「瓦の端部」では「出」が大切です。当然、雨漏り防止の効果は全くありません。

一見、キレイに見える屋根ですが…

雨漏り対策のために大事な「のし瓦」の「せり出し」をコーキングで無くしてしまいました。

屋根では「縁を切る為の出」が、至る所にあります。今回、点検の際の目線についての一端をお話させて頂きました。雨漏りの原因の特定は、奥が深く「屋根の点検はプロへ相談」をお勧めします。